我々整形外科医は、行政によってますます活動の場が失われてきている。リハビリテーションは介護保険へ移行させるのが厚労省の方針だ。ちょっと待てと言いたい。リハビリテーションを必要とするのは高齢者だけか?それよりもっと重要な問題は、「基本的に介護保険は患者を元通り元気にする」という発想がないことである。医師は歩けなくなった患者を歩けるようにすべく考える。翻って介護保険は車いすを与えるのである。トイレに行けなくなればポータブルトイレを持ち込む。いくらでも患者さんの日常生活動作(ADL)は低下する。あまりにひどいので、デイケアやリハビリ型デイサービスを行っているが、これにも致命的な欠陥がある。 「医師が関与しないこと」である。介護保険は自分たちの言うことを訊かない医師に対して、厚労官僚が意のままに操れるよう開始したものである。そこにオリックスをはじめとする企業経営家と組んだ小泉首相がそれに乗っかって始まった。双方にとり、医者を排除することが都合よかったのである。だから、介護のリハビリは好き勝手である。医療の素人でも参入できる。訪問リハビリと称して、理学療法士でなく看護師が行っていることもある。これが羊頭狗肉でなくて何か?しかも週2回程度。改善するわけがない。壮大な税金の無駄遣いと私は考える。安かろう、悪かろうの典型である。しかもそれを差配するケアマネージャーが、単独では生計を立てられないのでほぼ全員が「紐付き」である。そうなれば、自分の雇い主の都合のいいように計画を組むのは当然。しかも医療が全くわからなくてもなれるのがケアマネージャーである。不満を抱えつつおられる患者さんもいるようだが、不思議とケアマネを変えたという話は聞かない。生殺与奪を握られているような気分なのかな?医者はすぐ変えるのに。劣悪な介護を受けている患者さんのADLは確実に下がる。それは介護側の思うつぼである。介護の介入がが益々増えて、彼らの収入が増えるから。介護保険の世話にならないという気構えが大切だ。それと介護保険に詳しい主治医を持つこと。それに尽きるように思う。