歯科で行われている「インプラント」(人工歯を直接あごの骨に埋めるもの)は、私たち整形外科医にはなかなか理解しがたいものです。というのも、骨は元来「無菌」なんです。人工関節の手術も、雑菌の少ない特別な「クリーンルーム」を使い、しかも息すらかからないように宇宙服のようないでたちで手術をする。術前に歯周病や水虫の治療をされた方もおられるでしょう。それくらい清潔であることが求められます。そのなかで「口内」ほど雑菌が多いところはないのに、そこに骨に突き刺さっている物体が、口腔内に屹立しています。「インプラントを伝って何で骨に感染起こさない?」と不思議なんです。だから私は「絶対インプラントはしない」と決めています。歯科の先生によれば、唾液が感染予防の立役者なんだそう。殺菌?作用があるらしいのす。以下某基幹病院の口腔外科の部長に聞いた話です。「認知症になると、歯磨きがおろそかになって、口腔内が不潔になります。するとインプラントの感染がおこります。これからは認知症患者が増えて、大問題になりますよ。」インプラントが感染を起こすと、顎の骨が溶けます。当然噛めません。しかも骨の感染を治すのが大変なのは、昔の化膿性骨髄炎の悲惨さをご存知の方なら、すぐご理解いただけるでしょう。歯が悪くなって、入れ歯やインプラントをお考えの方は、将来ご自身が認知症になった場合も含めて、熟考されることをお勧めします。
2017-05-23