年末から今にかけて、コロナ禍を扱った2冊の小説を読んだ。

まずはジャーナリストの手島龍一さんの「武漢コンフィデンシャル」。

新型コロナウイルス発生の秘密に迫る国際ミステリーだ。小説だから真偽はわからないが、オバマ政権(私は彼のせいで世界が混とんとしたと考えているが)が中国を信じて手を握ってウイルス研究を許したために新型コロナウイルスが誕生したことを匂わせていた。

面白いのだけれど、時代が前後しすぎて、構成に凝りすぎているため少々わかりづらい。

2冊目が、現役の医師である知念実希人さんの「機械じかけの太陽」。

これは日本における新型コロナ発生から今までの、医療業界で働く人々の人間模様を描いたものである。主人公は幼稚園児を持つ離婚経験ありの呼吸器科の女医さん、看護師という仕事に生きがいとプライドを持ち現在の恋人との結婚になやむ看護師さん、そしてもうすぐ70歳になる町中の内科開業医である。

彼らの奮戦記を現実のデータと時の政権の政策、国民の動きを書き記したものである。ドキュメンタリーとしてとらえておいいのではと思う。

件の看護師さんのくだりでは何度も鼻の奥がツンとなり、目が霞んだ。

私たち医師は、科や専門を自分で選び、臨床も研究もある意味自由にできる。その代わり現場で死ぬ覚悟はいつでもできている。私だって大災害は整形の出番だけれど、過労で死んだら仕方ないと考えている。だから小説の中で医師が心が折れそうなほど過労でも、自分に置き換えるだけのこと。普段は遊んでいる貴族がいざ戦争になると先頭に立って戦って死ぬのと同じだ。

ただ看護師さんはちがう。病院の命令で勤務場所を決められる。未知のウイルスと戦う最前線送られ、死の恐怖と戦い、心が壊れていく様はどうすることもできないとはいえ、日本の社会の弱点だろう。

現場に丸投げしてそれでしまいなのである。使い捨て。

これは医師にも言えることで、激務のあまり医師が退職する例が多いのである。医療関係者の善意に頼る制度を見直せと言いたい。

それと今回のコロナ禍で、人間の(患者さんお)醜さを目の当たりにして、人間不信任なった医療関係者は非常に多いことも記しておく。

読んでほしい一冊である。

最後に言う。

日本の医療関係者は世界最高のモラルと医療水準を持っている。

交番が世界から賞賛されるように、日本の開業医の水準は世界最高であるとも書き記す(恥ずかしいけど)。