なりふり構わぬ国による(財務省による)医療費抑制策が続くのであるが、「医療費が安いならそれでいい」と思うのは浅はかであると言っておく。

「安かろう悪かろう」を地で行く日本の医療。

今度は、ジェネリック薬(以下ゾロ)の金額ベースで65%以上の使用率にするそうである。

そのため、皆さんが知る有名メーカーの薬を服用した場合、差額が患者の自己負担になる。

とんでもないことである。先発薬とゾロは明らかに効果に違いがあると感じることが多い。

さらに、ゾロのメーカーは、利益がでなくなれば、製造をやめるかもしれない。今までもそうであった。

また利益を追求するあまり、正しい製造工程を経ず、粗悪な製品を作って、出荷停止になる企業が相次いでいることは、周知のとおりである。

当院に限っても、局所麻酔薬や漢方薬、ビタミン剤など手に入らなくて難儀している。

また工業製品とはいえ、薬剤は生産計画があるので、急な増産が難しらしい。ますます欠品傾向が強まるだろう。

加えてゾロメーカーは売れる薬しか造らない。販売量を見込める高血圧などの慢性疾患用の薬剤ばかり作ることになる。抗生物質などの本当に大切な、しかし需要の一定しない薬剤は、いざというとき不足して国民が困ることになるだろう。インフルエンザの流行でこの冬去痰薬が市場から姿を消したように。

円安で原料の輸入価格が上昇し、製造コストが高くなっていることも拍車をかける。

一番重要なのは、新薬開発力のある先発薬メーカーの売り上げが下がることで、企業体力が失われ、新薬を開発することができなくなることである。いずれ日本のメーカーは強大な外国資本の傘下に入ることだろう。日本の製薬産業は壊滅するかもしれない。

「損して得とれ」である。

目先の弥縫策にとらわれる財務省は日本を滅ぼす。

この秋から大変なことになると、不安な気持ちでいる。