先週末、母・長女と松竹座での七月大歌舞伎を観てきた。今回は、松本幸四郎改め松本白鴎、市川染五郎改め松本幸四郎襲名披露である。新松本幸四郎は子供たちが観ていたEテレの「にほんごで遊ぼう」に出演していたころから、くせのないシュッとした顔が好きだった。口上を観ることのできる夜の部へ。2階席の最前列だった。臨場感は少ないが俯瞰して見渡せるのがいい。それに傾斜が強いので、私のような大男が座っても後ろに迷惑をかけない。いつも小さくなっているのである。出し物は、「御浜御殿綱豊卿」と「女殺油地獄」どちらも長セリフの多い芝居である。前者は片岡仁左衛門と市川中車のほぼ二人芝居。中車は大熱演だった。暑苦しいくらい。でも仁左衛門の抑えの効いた芝居の前では、青さがでる。指先ひとつまで行き届いた仁左衛門の色気にはかなわない。さすがである。長年のひいきの気持ちがよくわかる。毎年七月に出演される僥倖をもう少し味わいたい。そして「女殺油地獄」。仁左衛門の十八番である。これを新松本幸四郎が演じる。歌舞伎にも馬鹿な放蕩息子が主人公という演目は多い。人間の弱さ、強さが出るからかな。これも猿之助とのほぼ二人芝居。猿之助、女形もできて芸幅が広いな。お二人油まみれになりながらの大熱演であった。幸四郎はまだ生真面目さがそこかしこにでてくる。年月をかけて艶をだしていかれるのであろう。お楽しみの幕間弁当もおいしく、楽しく帰路についた。