旧帝国大学にだけ講道館柔道とは異質の柔道があると、5月に書きました。

増田俊也著「七帝柔道記」に触発され、先週日曜日旧帝国大学7校の「七大戦」観戦に行ってまいりました。

会場は愛知県武道館。武道のためだけの立派な体育館です。自動車でわざわざ名古屋まで。物好きと言われれば、そうだなと納得。

二日間で行われます。日曜日は準決勝と決勝。

準決勝が、東京大学対北海道大学、九州大学対大阪大学。

15人対15人の勝ち残りの殲滅戦です。この帝大柔道の特徴は、判定がありません。一本取るか、引き分けか。現代柔道の「待て」もありません。

各校エース選手がどう勝ち残るかが勝負です。逆に言えば、引き分けてエースを畳から降ろすのも大事な作戦。

最初から引き分けを狙う「分け役」がいるのが特徴です。彼らは最初から寝技に持ち込んで「カメ」と言われる四つん這いの姿勢になります。講道館柔道ではこれは反則です。

とにかく寝技に引きずり込んで、相手に何もさせずに引き分ける。

「練習量がすべてを決める」と言われるゆえんです。大学で柔道を始める人も多く、ただひたすら寝技を磨くため4年間費やす。外野から見れば滑稽にも見えますが、ある種の感動を覚えます。講道館柔道に背を向けて鍛錬するため、段位もとらず最終の4年生なっても白帯の人がいます。

ひたすら寝技の練習をするため、畳に擦りつけられた耳は変形し、いわゆる「餃子耳」になります。多くの選手がそうですし、OBと思われる審判や、観客席のおじさんたちの耳もそうでした。ラグビー経験者の餃子耳よりひどい(ちなみにラグビーはポジションで変形する耳が決まります)。

試合時間は6分。国際ルールの5分より長い。しかも副将と大将戦は8分です。

ただひたすら男が組み合って畳をごろごろしている柔道。嫁さんがぽろっと「そんなん面白いん?」と言いました。

私も、観てて退屈しないのかな、と思っていたのですが、引き込まれるのに時間はかかりませんでした。準決勝、決勝の4時間近く。エアコン効いた柔道場で、興奮の汗をかきながら最後まで見届けました。

決勝は北海道大学対九州大学。北大が2人残しで三連覇を果たしたのでした。

今も配信動画や自分で撮った動画を観てます。

こんな大学生活を送るのも有意義なのではないでしょうか。もっとも帝大に入る学力が必要ですが。

問題は少子化と時代ですね。しんどいことを4年間することに意味を見出せない学生は増えるでしょう。現に、京大、阪大、名大は15人揃えられずに参加していました。

写真は試合中のものですが、現代柔道でこんな変な姿勢ないよね、とお判りいただけるかと思います。