勤務医のころは、当然手術を多くこなしておりました。診察して、できるだけ手術を避ける治療をして、他に方法がなくなれば最終手段が手術です。

おのれの治療が正しかったことを確認する場でもあります。

手術により劇的に改善する様を見れば、私もうれしいし、決断いただいた患者さんにお礼を言いたい気持ちにもなります。

開業するにあたり、外科医が一番悲しいのはメスをはなすことです。宮仕えのストレスとのはざまで悩むわけです。

手術場という「戦いの最前線」から離れて26年、戦線に復帰いたしました。

開業医ながら、自分の患者さんを近所の病院で手術している同級生から声がかかりました。助手として。彼とは2年間同じ病院で勤務して、気心が知れてます。

喜んでお手伝いしてまいりました。時は流れ、手術前の手洗いや消毒の仕方も変わっていました。

「私で務まるのか」と少々不安でしたが、杞憂でした。メスが降りた瞬間、すぐ感覚を取り戻しました。彼が何をしたいかを考え先回りして行動する。助手としては合格点だったかな。もっとも術者になろうとは思いません。メスさばきは戻りません。患者さんに失礼です。

私の場合、信頼できる先生が周りに大勢いるので、安心して患者さんを預けることができます。優秀な勤務医と太いパイプを持つのも、開業医にとり大切な仕事です。

2時間弱、極限に集中した時間を過ごしました。手術後、体全体に広がる充実感。これこれ。やはり私は外科医なんだと実感しました。

彼もやりやすかったようで、今後も時々手伝うことになりそうです。