こんなに真剣に格闘技の試合を心待ちにしたのは、伝説の「猪木・アリ戦」以来ではないか。

「猪木・アリ戦」は記憶が正しければ、中学の時土曜日の午後であった。放課後の掃除もそこそこに小走りで帰宅して、昼食のインスタントラーメンを食べながら、塾へ行く時間を気にしつつ観たような気がする。

素人には理解できない「世紀の凡戦」だったが、これ以後異種格闘技が花開くこととなる。やはり猪木は偉大だ。

さて、今晩は井上尚弥選手の3団体統一戦だった。

不案内な方に説明すると、現在世界のボクシング団体は4団体あって、階級も異常に細分化され、いわゆるボクシングチャンピオンはなんやかやで60人くらいいる。チャンピオンの大安売りである。

井上尚弥は「黄金のバンタム」といわれる軽量級だが輝かしい歴史を持つ階級の2団体王者である。階級を超えて上位にランクされる偉大なチャンプだ。その彼が他団体チャンピオンと3団体統一を賭けて試合に臨んだのだ。

私は彼のことを、日本の生んだ史上最高のボクシングチャンピオンと思っている。また現代日本らしい、艱難辛苦を感じさせることのない、スポーツとしてのボクサーだ。

試合の放映もまた今風だ。テレビ放映がないのである。なんと通販のアマゾン契約者のみがネットで観られるのである。

私は診療所の消耗品の買い物をほぼすべてアマゾンで購入しているせいで、いつの間にか送料が無料になるプライム会員になっていた。プライム会員は年会費(送料で十分相殺される)だけで、映画など無料で見放題なのである。残念ながら見る暇はない。

もったいないなぁと考えていた時に、これである。

ボクシング、格闘技ファンとして観ないてはない。

雑用を早く切り上げ、入浴し、缶のハイボールを片手にパソコンの前に。テレビの前じゃないところが面白い。部屋を真っ暗にし、ヘッドホンを装着。集中が半端ない。

勝負はあっけなく短時間でついた。

でも身体は熱くなり、汗ばんでいた。

確実に、金を使わずいい目をできる時代は終わろうとしている。くだらない地上波とはおさらばだ。